イクモくんが現れて、もうどれくらい経っただろう…。
かなこは仕事でかなりの成果を出し、パワハラや残業は少なくなった。
生活週間や食生活も改善され、髪も肌も、見違えるほどきれいになった。
それもこれも、イクモくんのおかげ―…。
「かなこ、キレイになったね」
「えっ、何急に…どうしたの」
「そろそろお別れなんだ」
そう言ってイクモくんが渡してくれたのは、育毛剤。
あたしも育毛剤を使うような年になったのね、と苦笑するかなこに、イクモくんは「かなこにはずっとキレイにいて欲しいからね」と微笑んだ。
そう、育毛剤は薄毛になってから使うよりも、薄毛になる前の習慣として使うほうが、長い目で見ても効果的なのだ。
「僕が今までやってあげたこと、忘れないでね」
「かなこはずっとキレイでいられるから」
「きっと素敵な人が―…」
最後まで言い切らずに、イクモくんはスーッと消え、元のヘアブラシの姿に戻っていった。
「バイバイ、イクモくん…」
===数年後===

イクモくんとさよならしたかなこは、同じ世代の誰よりも美しかった。
その美しさのおかげで、素敵な人と出会うまでにはそう時間はかからなかった。
今でも、イクモくんに習ったヘアケアは毎日欠かさず行っている。
そう、イクモくんはいつだって側にいるから・・・・。
FIN